え?そうですよ
ゆうれいって幽霊のこと
私がお能をやめないのは
謡のメロディが好きなのもあるけれど、
一番はなんとっても
お能の哲学っていうか
元になっているのが世阿弥の思想らしいんですが
それが面白いのですよ。
それを私に教えてくれたのが
梅若流の角当行男先生。
それも講義で教えるのではなく
『あのね、人間の感情の方がべとべとして汚いの。
幽霊になるともっとさっぱりしているの』
とか
『そこはね、殺された兵士の幽霊が殺した人に
もう苦しまないで下さい。
私は成仏しましたからって慰めるんですよ、
その気持ちでうたわなきゃあ』
とか
先生が言いながら謡のご指導をするんです。
私は謡より
そっちの言葉を聞きたくて
通っちゃう。
だって
幽霊って
うらめしや〜って出てくると思っていたけれど、
生身の人間のうらめしや〜の方が
恐ろしいっていうことじゃあないですか
そしたら、
幽霊は怖くないんだ
なんて考えたら
面白くて
クワバラクワバラは
生身の人間に唱えなきゃあ
とニヤニヤしてたら
『中野さん、
そこは下げるの!』と先生にカツ!
はーい
練習します〜
と、
楽しいお稽古をして頂いたのは、
亡くなったお師匠様たちの魂が見守る
川崎のお稽古場でした。