出会いから

TTMゆいの中野むつみです。

偶然といえば偶然だけど、
不思議な出会い。

ただ手を挙げて乗ったタクシー、
その方は女性の運転手さんだった。

私はいつもの着物姿だ。
乗ってしばらくすると、

『お客様はいつも着物姿なんですか?』
と、聞かれた。

私は、
叔母や祖母の形見の着物の話や

着付け教室に通った話をした。
運転手さんは、

『私も着物が大好きで
昔は縫っていました。』

と言った。
どう見ても私よりかは若い方だった。

『あら、チクチクするのが
お好きなんですね!』

と、
私は自分が、

いかに針が嫌いかを言った後、

先日、茶BRAに行って見た、
和刺繍の話をした。

『野口染舗さんと言う所で
茶BRAというのをやってるんですが、

そこにあった和刺繍が
素晴らしくて!』と言うと、

その運転手さんは、
『私が勤めていたところです!』

と、仰ったのだ。
高校を卒業し、

野口染舗さんの
和裁学校を兼ねた会社に

就職したそうだ。
寝ても、

和裁のイメージトレーニングを
していたくらい好きだったけれど、

和裁だけでは食べていけず、
今はタクシーの運転手さんになったが、

今でも野口さんとは
交流があるそうで、

話は盛り上がり、
楽しいタクシー時間になった。

もう一つの不思議な出会いは
お雛様との出会いだった。

着物繋がりで知り合った
まだ40そこそこのUさんは、

日本史や古文書などに造詣が深く、
お雛様なども愛してやまない方で、

私は全く無知の分野だけれど、
これまた色々あって、

我が家のごく近くにお住まいの
雛人形研究家?の山田さん宅に

本日Uさんと伺うことになったのだが、
ごく普通の住宅で行われていたのは、

【秋の雛人形展】だった。
多分、去年までの私なら、

へええ
で済ませたと思うけれど、

今回は行ってみることにしたのだ。
玄関から始まって、

大小様々なお雛様が
飾ってあった。

Uさんと山田さんのお話は、
マニアックすぎて意味不明な言葉が

行き交ったけれど、
その中で見た一つのお雛様に

私は強く心が惹かれた。
札幌の誰もが知っている名前のお店の方から

譲られたお雛様だったが、
私が惹かれたのは男雛だった。

それも顔ではなくて、
その姿だった。

真っ黒い衣装だけなのに
その佇まいが好きだった。

『男雛が好きと言うのは
珍しいですね』と、言われた。

女雛にはあまり
興味が湧かなかった。

そして、
実家を取り壊す時

ついに見つけられず
亡くなってしまった実家のお雛様を

思い出した。
『お雛様は人形だから、

人間の代わりに
災難を受けてくれるそうですよ』

と、Uさんが言った。
急に、

あの見つからなかったお雛様が
母や姉、私に降りかかる災難を

全て代わって受けてくれた気がした。
なんだか心に残った最後の刺が

抜けた気がした。
偶然の人の出会いから

思いもかけず
幸せをもらうことって

あるのだなあ
と思った。

TTMゆいの中野むつみでした。