香りの精

TTMゆいの中野むつみです。

人生初、
香りを聞いた。

昨日、
小樽にある旧寿原邸で行われた、

聞香会に参加したのだ。
午前中は会場係、

と言っても
特にすることはなく、

参加者の方々を見守る感じだったのだが、
みている間に参加したくなり、

ならば
午後からは参加者に変身!

参加費を支払って
お客様になった。

小さな香呂に灰が美しく盛られ、
その中に、

真っ赤になったこれまた小さな炭を
埋め、

灰の中に少しだけ穴を開けて
空気を入れる。

その穴の上に
超小さな網を乗せて

その上に香木を置くのだが、
その香木が小さすぎて

老眼の私には、
網の線だか

香木だか
わからないほどだ。

で、
香木が温まり

香りを出すのだが、
あまりにほのかな香りなので

香呂の上に手を山形に置き、
親指と人差し指の間から

掌の中に漂う香りを聞く。
嗅ぐのではなく

聞く。
うーん、やっぱり嗅ぐ?

でも、
あまりにほのかな香りなので

神経を集中させて
鼻腔の奥で感じる。

で、
この香りは何かしら?

と、
香りの神様に聞く?

あーそうなのかも知れない。

最初は
鼻と耳は近いから聞く?

と表現するのかと思ったが、
あれは神様、香りの精に

聞いているのだ。
これはなんの香りですか?

心静かに聞いていると
香りの精が香りを放ち、

感じることができる。
そうなのですねー

なので、
心がどっかに行っていると

香りの精は教えてくれない。

私は一生懸命に集中したけれど
三つの香木の香りの差は

わからなかった。
慣れも必要なのだとか。

ただ
香りが持つ熱さは

とても気持ちが良かった。
少々体調を壊しているので

特別の炭で熱くなった空気が
鼻腔の奥に心地よいのだ。

香木も漢方的な役割を
するのだろうか。

ただ
本当に暑い日だったので

できればもう少し
涼しくなってから

また経験したいと思った。
が、

場所が旧寿原邸というのは
趣があってよかった。

聞香は
心を整える役目もするというが

静かな
庭が見える和室で

香りの精に耳を傾けるのは
やっぱり心が落ち着く。

お道具も小さくて繊細なものばかり、
特に香呂に灰を入れて

形を整えていく作法は
素敵な作法だった。

相手が灰だから
乱暴に扱うと灰は舞い上がり、

そこいらじゅう灰だらけになる。
香呂の縁に付いた灰を払うのも、

一枚の小さな小さな鳥の羽。
私だったら緊張して

くしゃみをしてしまいそうだ。

香木は
東南アジアから

渡ってきたものだそうだが、
それを使って繊細な作法から、

香りの精の言葉に耳を傾けることを
考えつくのが日本人らしい。

日々落ち着かない生活をしている私に、
ちょったあ反省しなさいよ!

と、
香りの精が言った気がした。

TTMゆいの中野むつみでした。