天女に会って

TTMゆい中野むつみです。

お能は哲学だなあ
と思う。

私がお能の謡を習い始めて、
まだ一年半。

それも行きがかり上習った!
みたいな感じなので

かなりの不良弟子だが、
この頃やっと

能の奥深さを感じるように
なってきた。

私のお師匠さまは
角当行男先生と

息子さん角当直隆先生だ。
お二人とも神奈川からいらしてくださる。

2月末には、
初謡があり、私も恥ずかしながら、

【土蜘蛛】の頼光役を謡ったが、
そのできはさておき、

先輩の女性が謡った【羽衣】の歌詞に
いたく心が惹かれた。

天女が羽衣を忘れ
それを拾った漁夫が天女に

返しますよ〜と言ったら、
天女は、

羽衣を返してくれたら
お返しに舞を踊ります。

と言うのだが、
漁夫は、

羽衣を返したら
きっと舞を踊らずに天に

帰ってしまうだろう。
と言うのだ。

それに対して天女は、

『いや疑いは人間にあり。
天に偽りはなきものを』

と、返す。

天には疑うと言う心はない。
天には偽りがないから。

人間には偽りがあるから、
人を疑うのだ。

なんと深い言葉だろうと
思った。

そして昨日、
私はその天女みたいな人に会った。

その方は、
池戸恵子さんと言う方で、

3月から
札幌の美園というところで、

児童発達支援・放課後等デイサービス
【おとつむぎ】を開設された。

池戸さんは幼い頃からピアノを習い、
その先生を恩師と慕って

ヤマハのピアノの先生になったけれど、
思うところがあって

ベトナムの雑貨販売や
近頃は、

プロ野球のオリジナルグッズを
製造販売する会社の経営者になったのだが、

去年から、
音楽療育の【おとつむぎ】を作ろう!

と決意し、
今回開設の運びとなったのだ。

なんとまあ
どうして?


3時間ほど聞かせてもらった。

私のインタビューは
この事前のインタビューが一番大切で

肝となる部分を
どこまで引き出せるかにかかっている。

私は真剣に
池戸さんがピアノが好きなこと、

恩師の先生の音楽療育の素晴らしさを
知っていること。

などを聞いたのだが、
今ひとつ肝にぶつからない気がして、

粘った。ら、
最後にわかったのが、

池戸さんの
天女の心だった。

若い頃から池戸さんの周りには
障がいを持った子どもを持つ友人が

多く集まり、
何かしたい、助けたいと言う気持ちが

ずっと潜在意識に中で
育っていたようだ。

その気持ちは
どんどん大きくなり、

『私、日本で
この音楽療育を使った施設経営を成功させて、

次はベトナムにも作りたいの。

ベトナムには日本より障がい児が
多いのです。

そして、医療も福祉も介護も
遅れているの。

ベトナムで商売をさせて貰ったお返しに。』
と語ってくれた。

池戸さんは人を疑うことが
できないそうだ。

天女には偽りがないから。
ただただ真っ直ぐに信じる道を歩んで、

人の手助けをしたい。
その一心で歩き出したおとつむぎ。

きっと子どもたちや
お母さんたちの羽衣になってくれるに

違いないと思った。

TTMゆい中野むつみでした。